(私の気持ちは受け止めるくせに、私の想いには応えようとしないんだから……ズルいよ)
塩と砂糖を使い分けて、どこまでも私を沼に落としていく。その沼に底はないと分かっているのに、入ったら最後と分かっているのに……どうしても引き寄せられてしまう。
私は咲人さんの魅力に、狂うほど、抗えない。
(あぁ咲人さん、あなたは……)
なんて魅力的で、残酷なんだろう。
「ミミ、朝ごはん食べたら何する?」
「え?」
「何でもいい。ミミのしたい事に俺を巻き込んでよ」
(なんか咲人さん、ちょっと楽しそう……?)
私に合わせてテンションを上げてくれているのか。それとも、やっと私が出ていく算段がついて心が晴れたのか――うーん、意図までは分からない。
(でも雰囲気が柔らかい。言葉にもトゲがない。咲人さんが今、私を拒否していないのが分かる)
ズルくて残酷な咲人さん。
だけど……どうしようもなく、好きな人。
私の想いは、最後の最後まで報われない。
だったら、この提案を素直に受けよう。せっかく咲人さんが「甘えて」と言ってくれたのだから。
こんな日は、もう二度とやって来ないのだから――