「……あ、」


合点がいった。咲人さんが底なしに優しい理由が分かった。儚くも美しい咲人さんの笑顔を見て、納得した。

この幸せが、「有限」なことを。
一瞬の泡沫に過ぎないことを。


「もしかして……私が〝思い出メモ〟作っていること、知ってますか?」

「……さぁ」

「そっか……知られちゃってたんだ」


知った上で「思い出を作ろう」って言ってくれたんだ。私の気持ちを汲んで、わざと。


(悲しいお別れをするための思い出作り、なんて。酷だなぁ……)


ねぇ咲人さん、その気遣いは。
なんて残酷で、なんて優しくて。
切なくて脆い、一生の宝物だろう。


「~っ。ぐ、具体的に、どんな思い出作りを?」

「今日はミミのしたい事だけをしよう。何でも言って?何でも応えるし、何でも受け止める。だから遠慮しないこと」

「遠慮しないって……そんな事いわれたら、私めちゃくちゃ甘えちゃいますよ?」

「例え〝甘え〟が行き過ぎても良いよ。きっとそれも思い出になるから」

「……そう、ですか」


ずるい。
咲人さんって、本当にズルい。