(うわーやっちゃった!恥ずかしい……!)

「ふっ。ねぇミミ」

「は、はい……」


赤くなった顔を覆う私の指が、一本一本はがされる。ゆっくりと、クリアになっていく視界。開けた景色の先には、王子さまのようにカッコイイ咲人さん。

栗毛の髪に、いつもの白シャツ。黒のパンツは足が長く見えて、スタイルの良さを羨んでしまうほど。

それに、顔に力が入っていない。いい意味で緩んでいる。咲人さんがまとう空気にも、トゲがない。


(なんだろう。今日の咲人さんがいつもと違う。優しすぎる、というか……)


私を見る瞳。
私を触る手。
私を包むオーラ。

全てが全て、優し過ぎるほど優しい。
それはもう、不自然なくらいに――


「やっぱり、ミミと一緒に朝ごはん食べたい」

「私と、朝ごはん……?」

「……うん。ダメ?」

「!」


もう、咲人さん。
そんなこと言っちゃダメじゃないですか。

せっかく諦める準備しているのに。
咲人さんと離れようと思っているのに。
そんなこと言われちゃ、私――

すると、咲人さんが笑った。


「最後に思い出を作ろう。
ミミがココを出て行く、その前に」