「……」

「……っ」


後ろから抱きしめられているから、咲人さんの顔は見えない。表情が分からない。嬉しそうなのか、それとも迷惑そうなのか。


(といっても、咲人さんなら〝迷惑〟って思うよね。私の好意を〝やめてほしい〟って言ったくらいだし)


すると案の定というか。まるではぐらかすように、咲人さんは話題を変えた。


「飛鷹は死なないから安心して」

「え……飛鷹さん、生きられるんですか?」

「うん」


バックハグのまま咲人さんが頷いた。栗毛の髪が、私の首に柔らかくぶつかる。くすぐったくて、ふにゃりと笑ってしまった。


「そっか……よかったぁ〜」

「……」


笑った私の横顔を、咲人さんはどんな気持ちで見ていたんだろう。


「飛鷹は、死なない。俺が保証する」


どんな気持ちで、その言葉を繰り返したんだろう。


「そっか、安心しました」


あの飛鷹さんだもんね。死ぬはずないよね、良かった良かった――って体の芯から力が抜けた途端。

間の悪いことに、私のお腹が盛大に鳴った。