嬉しくて何度も頷く。暑さと興奮から、もっと汗が吹き出した。咲人さんの前で発汗なんてあってはならぬ事なので、急いで心を落ち着ける。

だけど咲人さんを盗み見ると、驚くことに。咲人さんの横顔にも、薄ら汗が光っていた。


(まさか咲人さんも私と一緒で興奮してる!?……って、そんなわけないか)


これ以上の汗が出ないよう、深呼吸を何度か繰り返し、咲人さんに「手を出してもらうよう」要求する。すると咲人さんは、大人しく手のひらを広げた。


(等間隔に並んだ血の線。これって……)


実際に自分の手を、何度か結んで開いて分かった。咲人さんの傷は、手をグーにした時、ちょうど爪が当たる位置。


「まさかこの傷、咲人さんの爪で出来たものですか?」

「そう」

「なんで、こんな……。爪で怪我するなんて、力いれすぎですよ。何してたんですか?」

「……」


念のため消毒液、あと絆創膏も!と、部屋の中を駆け回る。すると眉を顰めた咲人さんが、薄い唇を動かした。


「ミミの叫び声を聞いた時……ついね」