そうだ、普通に喋っちゃダメだよ。
だって、どう考えてもおかしいじゃん。

聞き間違いじゃなければ、さっきこの人は……


『ココって女を用意してくれんの?』


私を見て、そう言った。
私って〝用意された女〟なの?
この男のための……女?


「いや、でも私はいずれ咲人さんの彼女になるし、決してフリーってわけじゃなくて……」

「なぁ、この子。心の声がダダ漏れなんだけど?」

「……構うな」


咲人さんが突っぱねるよう返事をする。まるで「私の事なんかどうでもいい」と言わんばかりに。

だけど反対に、男は爛々とした目で私を見た。瞳に灯るのは、うずく好奇心。


「あの子、オツムが弱いのか。はは、かっわいー」

「……ミミを気に入った?」

「名前、ミミってんの?なんだそれ、ネコみてぇ」

「……」


カラカラ笑う男とは真逆で。口を真一文字に閉じた咲人さんの雰囲気は重たい。

何を言うでもなく男を見ていた視線は……わずかに緩んだ後、ゆっくり私へ移動する。