文鎮って、書道する時に半紙を押さえる〝重し〟のことだよね。あの細長い鉄の塊が、なんで私?
すると飛鷹さんは、少し体を引いて私を見た。
「ふは、やっぱそうだわ」
こらえきれない笑みが、クツクツ漏れている。
「手を上で縛られて細長く見えるし、緊張してカチコチだし?どー見ても文鎮だわ」
「わ、私〝重し〟になるほど太ってません……!」
「体の硬さの事いってんのよ。そんなに力入ってたら、いつまで経っても気持ち良くならねぇんだって。体の力抜けよ、ほらほら~」
こしょこしょと体を触られ、くすぐったさに身じろぐ。
脇はまだしも、首だけは!と思っているのに。機微に聡い飛鷹さんは一発で私の弱点を掴み、首に手を入れた。
「ほーらミミちゃん、リラックスリラックス~」
「あはは!じゃなくて!や、もう本当にやめて、!」
全拒否してるのに、全く手を止める気配がない飛鷹さん。
あぁ、もう!こうなったら――!!
「飛鷹さんの……バカ!」
といっても、それは。
この状況に置いて、実に不適切な言葉で……。
「……バカ?」
「いえ、その……忘れて、ください……」
すぐに平謝りした。
「バカ、なんて。わぁ……す、すみません」
「……」
後悔の念に苛まれてる間。
飛鷹さんは、しばらく呆気にとられていた。
だけど委縮し続ける私を見て、ついに我慢ならなくなったらしい。「ブッ!」と盛大に吹き出す。
「……ハ、ハハ!」