驚いて目を開いた飛鷹さんは「は~」と。これでもかというほど、大きなため息をつく。
まるで体中の酸素を出し切るように、長い時間をかけて「冷静さ」を取り戻していた。
「やっぱ早計だったなー。いや、誤算ってのか」
「難しい言葉を知ってるんですね。本当にガッコ―に行かなかったんですか?」
「……そーゆーとこだっての」
飛鷹さんは、おもむろに私の頭をヨシヨシ撫でた。
いきなりの事に驚くも、そっと寄せられた優しい手つきに、温かな体温に。なんとも言えない安心感に包まれる。
気持ち良さに目を瞑っていると「やっぱネコだな」と飛鷹さんがクツクツ笑う。目じりに寄った笑い皺が可愛く見えた。……怒られるから言わないけど。
「アンタがもっとバカでマヌケで、単なる面食いなら良かったんだ」
「え、いきなり悪口ですか?」
「褒めてんだよ。意外にもアンタが頭のキレが良くて、賢いから……ほんと、手を焼くわ」
「ありがとう、ございます?」
「礼を言うんじゃねーよ。嫌味かよ」
撫でられている指の隙間から、飛鷹さんの弱った笑顔が見える。
んん?なんだろ。今日の飛鷹さんの様子が、いつもと違い過ぎて……本当に調子が狂う。