(その時に言ってみようかな。私にキスを教えてくださいって。咲人さんから教わりたいですって)
どんな反応するんだろう。だいたい想像できるのが悲しいけど、逆に、全く想像できない返答が来るかもしれない。
(意外にも「いいよ」って言ってくれるかも!)
なんて。
私の頭がお花畑になっている間に。
咲人さんに案内され、今まで入ったことない部屋の前まで来た。ここは「物置」って言われてたから、入ったことない。だから中に何があるのか、知らないんだよね。
そんなことをポケーと考えていたら。咲人さんが、私を見ないまま尋ねる。
「ミミはさ、俺のこと好き?」
「当たり前じゃないですか!大好きです!」
「そう。じゃあ――
俺のこと好きなら、俺の役に立てるよね?」
「……へ?」
ニコリと笑った咲人さん。ドアノブに手を置き、ゆっくり扉を開いていく。
初めて見る部屋。そこに何があるんだろうって。ワクワクした心は……すぐに凍り付く。
「へぇ。ココって女を用意してくれんの?気が利くじゃん」
「……誰?」
両手を後ろで縛られ、拘束された男の人。
獰猛な瞳を隠そうともしないその人が、私を見て舌なめずりをした。