じっと視線を送り続けていると、飛鷹さんはタバコではなく私が持って来たパンを手にする。
掴んだのは焼きそばパン。
あ、私も狙っていたのに。
「やらねーよ?」
「う……」
「で?俺をジッと見て、何よ?
昨日ギャン泣きだったにしてはメソメソパンを持ってねーし、妙にスッキリした顔してるし?何か心境の変化でもあったわけ?」
「いえ。飛鷹さんって童顔だけど、ちゃんと大人なんだなって。タバコ持ってる姿を見て、改めてそう思っただけです」
すると焼きそばパンを頬張りながら「ケンカなら買うぜ?」と飛鷹さんが手の甲で、私の頬をペチペチ触る。もちろん勝率はゼロなので、謹んでお断りした。
「メソメソパンを持って来なかったのは、やっと気持ちの整理がついたといいますか。前を向く準備を始めたんです」
「……へぇ」
パクッと焼きそばパンを一口。ソースの香りが鼻孔をくすぐる。あぁ、やっぱり私も食べたかった。
「ちなみに」と飛鷹さん。
「いつ前を向く予定?」