もし私がしっかり者なら、今ココにいません。不良に絡まれることもなかったろうし、もし絡まれていても賢く撃退していたはずです。

それに、一般人と違うと分かっていて、のこのこ咲人さんについていきません。ついてきたとしても、すぐ〝いけない事〟だと気づき、自分のアパートに帰るはずです。

私だから、
こんな私だったから、
咲人さんと出会うことが出来たんですよ。
今だって、こうして二人一緒にいられるんです。

それなのに――


「咲人さんナシで、どうやって生きていけって言うんですかぁ……っ」


頬を伝う涙は、首筋にかかり、一気に降下していく。すると咲人さんがつけた噛み跡に到達し、血の混じった涙が私のパジャマを濡らした。


「まさに、血涙だ……」


激しい悲しみに襲われた時に流す涙を、血涙と呼ぶと。いつか授業で習った。ほんと、その通りだ。押しつぶされそうなほど、激しい悲しみ。