「ミミ」

「え、きゃ!」


咲人さんは、座ったままの私の胸倉をつかみ、強引に膝立ちさせる。パジャマはオーバーサイズのものを着ているから、幸いにも首が締まることは無かった。

だけど、カリッと鈍い音がした後。目の覚める痛みが私を襲う。


「っ、痛!!」

「……」


咲人さんは何も言わない。
だけど、何かをしたのも咲人さんだ。

私から咲人さんが離れた後。飛鷹さんにつけられたキスマークに、いびつな噛み跡が残っている。


咲人さんに、噛まれたんだ。


(なんで、どうして……?)


ビックリして頭は真っ白。咲人さんに傷つけられたことがなかったから、まさかこんな形で罰を受けるなんて思わなかった。

……ううん。
これって、本当に罰なのかな?


「ミミ」


彫刻のように固まった私に、咲人さんが一言。


「これは餞別だよ」

「せん、べつ……?」


お別れする時に渡すもの。それが餞別。


(あぁ……そうか、つまり)


飛鷹さんにキスマークをつけられた私を見て、どこか安心したのも。「仲良くしてるなら何より」なんて言ったのも。

コレを最後に飛鷹さんの所へ行けって。そういう事なんだ。