「……穴?」
咲人さんはツイと目をやり、飛鷹さんがいる辺りを見る。
「!」
直径一センチ幅ほどの穴。
何かで抉られた?
それとも何かを突き刺した?
どうして深く陥没してるんだろう?
ハテナだらけの私。
だけど咲人さんは流石だった。
穴を見た瞬間は目を開いて驚いたけど、既に落ち着きを取り戻している。しかも穴の正体に検討がついたのか、詳しい情報を飛鷹さんに求めた。
「……数は」
「いち。群れてない、単独」
「……」
ならいいか――と言わんばかりに。咲人さんは浅く息をつく。飛鷹さんも飛鷹さんで何も気に止むことはないらしく、薄ら笑いを継続中。
二人だけの秘密の会話。どうやら、ちんぷんかんぷんなのは私一人みたい。
(話に全然ついていけないよ……)
単独、って言ってたよね?
じゃあ〝アレ〟のことかな?
「もしかしてゴキブリの話ですか?私が混乱する中、飛鷹さんがやっつけてくれたっていう……」
「……は?」
は?って言ったのは咲人さん。
すぐ飛鷹さんに「ミミも一緒だった?」と尋ねる。