まさか飛鷹さん、「ご褒美」なんて言いながら、私のメンタルを削って楽しんでる?私が咲人さんに見向きもされない事を知って。


(もしそうだとしたら、なんて悪質な楽しみ方っ)


じわっと、涙が浮かぶ。気付いた飛鷹さんが、私の頭に大きな手を置いた。


「そうメソメソすんなって。下向くなんてもったいねーよ?むしろ見せつけてやれ」

「見せつける……?」

「そーそー。ちょっとした勇気で、案外簡単に絶景が見られるもんだぜ?」

「?」


小首を傾げた矢先。
廊下に響く、ガチャリという音。

それは玄関からで、咲人さんの帰還を知らせるものだった。