「その時の攻防でケガしちゃったんですか?」
「ケガ?」
飛鷹さんの右頬に、鋭い傷。真っすぐ伸びた線から、傷の痛々しさが垣間見える。お風呂でしみなかったのかな。
「ずいぶん痛そう……」
「コレね。ちょーっとした誤算があってだな」
チラリと私を見る飛鷹さん。
まさか「誤算」=「私」だったりする?
「ネコお得意のひっかき、ってヤツ?いやー、キツイの一発食らっちったぜ」
「ネコって……まさか私ですか⁉」
「本物のネコみたいにバリバリ引っ掻くんだもんなー。もう痛いのなんのって」
ホロリ、と泣きまねをする飛鷹さん。
わ、私の防衛本能が無意識にやってしまったのかな?本来なら「ナイス防衛!」って称賛するけど……飛鷹さんは、ゴキブリから私を守ろうとしてくれたわけだし。
うぅ~ん、やっぱり責めるに責められない。むしろ、このパターンは私が謝らないと。