「ごめんなさい。ちょっとあなたの声が聞こえてきたから話を聞きたくて」
堂々と教室内に入っていく美奈子に女子生徒の1人が立ち上がって静止した。

「ちょっと待って、話を聞きたいってどういうこと? 急にそんなこと言われても困るんだけど」
吊り目のキツイ女子生徒は口を曲げて美奈子をにらみつける。

「そうだぞ。そもそもお前誰だよ、見たことないやつだな」
「それは……ええと……」

「それにそのスマホ! ずっとカメラがこっちに向いてるけど、もしかして撮影してる!?」
吊り目の女子生徒が両手を伸ばしてスマホを取り上げようとする。
画面は大きく揺れて天井や床を映し出した。

「ちょっと、やめてよ! 私のスマホなんだから!」
「勝手に撮影しておいて、よく言うわよ! ちょっと恵、ぼーっと座ってないでこの子どうにかしてよ!」

吊り目の女子生徒が振り向いた先にはおとなしそうな女子生徒が座っていた。
「え、えっと……あの……」

おどおどとした態度でようやく立ち上がり、近づいてくる。
「私はちょっと話が聞きたいだけなの!」