ふんふんと、彼の語る “おとぎ話” を、ぼんやり聞いていた莉里子だが、そこで「は?」となった。
「聖女を召喚する魔法? で “あなた” が現れた?」
「そう。 “あなた” だ。聖女とは、あなたに違いない」
“レオ様” は、莉里子を見て熱っぽく言う。
「とにかく早く、ランス殿下にお会いしていただきたい」
「よくわからないけど、お会いいたします。でもその前に」
「その前に?」
「あなたのお名前を教えてくださいませんか?」
「 あっ、私としたことが。ご無礼をお許しください。私は王子の親衛隊長である騎士レオナールと申します」
「レオナール? マジのレオ様!」
「何か仰いましたか?」
「あ、いいえ。なんでもないです。あの、レオ様とお呼びしてもいいですか?」
「お好きなように」
レオ様は微笑んで、「失礼」と言って、さりげなく莉里子の手を取り、手の甲にキスした! 触れるか触れないか程度の。
「で、聖女様のことは、なんとお呼びしたらいいでしょうか?」
「莉里…… リリーとお呼びください」
西洋世界にいるなら、呼び名もそれ風にすべきであろう。