「天宮さん、天宮莉里子さん!」

 男性の声に、莉里子はハッとして、しゃきっとなった。

「レオ様?」

「大丈夫? びっくりしたよ、結構揺れたけどね。怪我してない?」

「ここ、どこ? レオ様? レオ様はどこ……」

「自分で言うのも照れるけど、レオ様ならここにいるけど」

 顔を赤くしているのは、騎士レオナールではなく、井原拓海である。

(いや、あんたじゃなくて)

 莉里子は心の中で突っ込んだが、周りを見回して思い出した。
 ここは日本で、カプセルトイ専門店だ。
 地震が起きて、そして。

「やっぱり地震だったんだ」
 拓海は頷いて、ズボンのポケットからスマホを取り出し、見て言う。
「速報だと、この辺は震度3だって。まあまあ大きいね」

 一体、何が起きたのか。
 私は一瞬気を失っていたのか?
 さっきの異世界体験は、夢だったのか?

「天宮さん、大丈夫? 歩ける?」
 心配そうに言ってくれる拓海に、莉里子は微笑んで答えた。
「ありがとう、全然大丈夫」
「心配だから、近くまで送って行くよ」