「愛しています」
 レオ様が莉里子にキスしようとした、そのとき。
「リリー!」
 ランスが、息を切らしながら戻って来た。

「リリー、そなたとの結婚は、あっ!」
 言いかけたランスだったが、熱烈なキスを交わすレオ様と莉里子は、全く彼に気づかない様子である。

「結婚を破棄しないと、と思ったけど、もういいか」
 肩をすくめ、ひとりごとを言いながら、ランスは廊下を戻り始めた。

「待てよ。こうなると、離婚は妃の有責にならないか? どうでもいいか、そんなこと」
 ランスはスキップしながら城から出て、彼の愛馬に飛び乗った。

「オディール、いま迎えに行くよ!」
 白馬とランスは、羽が生えたようなスピードで走って行った。

 一方、莉里子は、レオ様のキスに膝の力が抜けたようになり、彼にもたれかかる。
 レオ様の莉里子を抱く手に、一層力がこめられた。

「あなたに永遠の愛を誓います」
 レオ様が囁いてくる。

 莉里子は夢見心地で頷いたが、その時、極度の緊張と興奮からか、ぐらりと視界が揺れて……。

「リリー? リリー!」
 レオ様の声が遠くなっていく。