頷くランスに、莉里子は朗らかに言ってやった。
「なら、プロポーズしちゃえば?」
「えっ?」

「後のことは何も考えず、行っちゃえば?」
「リリー様、無責任なことを仰いますな」
 レオ様の言葉を遮るように、莉里子は言う。

「私は、そろそろ結婚を考えなくてはならない年齢になってから、故郷を出て一人暮らしを始めたの」

「そういえば、リリー様はおいくつですか?」

 思い出したようにレオ様が聞いてくるが、莉里子は無視して話を続ける。

「未来のことは誰にもわからない。うじうじ考えてばかりじゃ、何も行動できないんだし。やりたいようにやってみたら?」

 目を輝かせるランスに、莉里子は言った。
「でも、自分の選択を後悔するようなことになっても、決して過去を振り返らないことね。お姉さんからのアドバイス」

 ランスは大きく頷いて、莉里子の手を取る。
「ありがとう、リリー。いや聖女様」
 そのあと彼は、駆け足で広間から出て行った。

 ぼんやりと見送る莉里子とレオ様だったが、周囲がとても賑やかなのに気づく。

「春だ、春になったぞ」
「呪いは解けたのよ!」
 城じゅうの人が歓喜の声を上げて、城の外に出て行っている。