ランスがうつむき加減で話し始める。
「若返るたびに、リリーに申し訳ないなって思ってた。リリーはこんなに余のことを思ってくれるのに、その思いには応えられない。余は、実はずっとオディールのことが忘れられないんだ」

「殿下!」
 レオ様は、明らかに困っている。
「殿下、そのことはもう。どうか、オディールのことは諦めてください」

「わかってる。魔王に婿入りすることも、魔王の血を引く娘を妻に迎えることも、どちらも無理なことなんだと」

 意外な展開に、莉里子は固唾を飲んで見守る。
 しかし何だろう。この、告白もしてない相手から振られたような残念な気持ちは、どうすればいいのだ?

「オディールは不老不死です。それに引き換え、我々は人間。殿下は毎年歳を取るけれど、彼女は永遠に若いまま。彼女を妻に迎えても、一緒に過ごせる時間より、彼女が未亡人として過ごす時間のほうが長くなるのですよ」

 そんなことを、つらつらと淀みなく言うレオ様。
 おそらく、二人の間で何度も交わされた言葉だろう。

「口を挟むようで申し訳ないのですが、つまり殿下は、オディール姫の魔力で一時的に迷ったわけではない、と仰りたいのね?」