「リリー、ありがとう。どうやら呪いは解けたみたいだね」
 はにかみながら言うランス。

「信じられない。こんなに早く!」
 莉里子は、ランスに微笑みかけ頷いた。

 二人の間に “真の愛” が芽生えたわけではないが、莉里子がこの国やランスのことを気の毒に思う気持ちが、呪いを解いたのだろう。

「殿下、もうひとつの呪いも」
 レオ様は感激の体を崩さないまま、広間の窓まで歩いて行った。

「ご覧ください!」
 おおーっと、どよめきが起きる。
 窓から見える光景は、緑一色といっても過言ではない。

 鳥の囀りが聞こえ、どこからか蝶々も飛んで来た。
「春だわ!」

 召使いの女性たちが窓まで走って行き、レオ様の周りに群がる。
 どさくさ紛れか、嬉しさからか、レオ様に抱きつく女性もいた。

「リリー様、無事呪いは解除されたようです。私は安心して出立できます」
「レオ様?どこへ行くの?」

「魔王と話し合いに」
「話し合い?」

「今後一切、我が国に手を出すな、また何かあったらその時は許さない、と言いに行くつもりです」

「レオナール、その必要はない。余が話しに行く」
 ランスが先程とは打って変わって、強い調子で言った。