「リリー!」
 莉里子の姿を一目見るなり、ランスは弾かれたように椅子から立ち上がって叫ぶ。
「なんて綺麗なんだ! やはり思った通り、美しすぎるよ!」

「ランス」
 顔が真っ赤になる。莉里子は泣きそうだった。お世辞にも綺麗とはいえない自分のドレス姿を、そこまで褒めてくれるランス。

 二人の姿を微笑ましく眺めていたレオ様が、ぎょっとした表情を浮かべる。

「殿下!」
「なんだ?」
 昨日、ランスに侍していたメイドが、さっと手鏡を彼に渡した。

「白髪が無くなってる!」

 彼の頭には、美しい金髪がふさふさに生えていた。
 心なしか、顔や胸のシミも薄くなっている気がする。

 レオ様が莉里子のほうをガン見してくるが、莉里子は目を逸らす。そのほうがお互いの為なのだ。

 何故かわからぬが、レオ様は莉里子に好意を持ってくれているらしい。
 彼のことが気になって、ランスに対する愛情メーターが上がらなくなっては困るのだ。

「リリーのおかげだよ! また若返った!」
 ランスの弾む声がする。
 しかしランスはその後、「あ」と小さな声で呟き黙った。