レオ様が、両腕を背中に回した状態で部屋に入って来た。彼は、背中に何か隠し持っている。だが、水色のドレスらしきものが、彼の背中からはみ出ていた。
「お着替えが必要だろう、と殿下が仰って」
莉里子はびっくりし、ランスの思いやりに胸がキュンとなった。
「嬉しい! 汗をかいてたから着替えたかったの」
なんて素敵なドレス!
お姫様みたい!
ドレスを胸に当てて、姿見で自分の姿を確認する。
(あっ……)
サテンのドレスはこの上なく美しいが、自分の顔には合っていない。
多分、おおかたの日本人には、こういうドレスは似合わないのだろう。
レオ様は、莉里子のがっかりした様子に目ざとく反応した。
「お気に召されませんか?」
上目遣いで心配そうに尋ねてきた。
「いいえ、とんでもない! 素敵なドレスをありがとうございます、とランスに伝えてね」
「わかりました。お着替えを済まされます頃に、またお迎えに伺います」
しばらくして迎えに来たレオ様と、ドレス姿の莉里子は、昨日のダイニングルームに向かった。
その際も、レオ様は柔和な笑みを浮かべ、莉里子に対する称賛の目を向けてくれていた。