翌朝目覚めた時は、めまいも頭痛もなくスッキリしていた。
 莉里子はベッドの中で、ウーンと伸びをする。

 ちょうどドアがノックされ、「失礼します」とメイドが入って来た。
 莉里子の洗面や着替えを手伝ってくれるという。

「聖女様はお肌が綺麗ですね、陶器のようにすべすべですわ」
 お世辞だろうが、朝から褒めてもらえて気分がいい。

「昨日、ご馳走をいただいて、こんな素敵な部屋も用意してくださったんです。だから、お肌も喜んでます」
「まあ、聖女様ったら」
 我ながら調子がいいと思うが、アラサー社会人なら、これくらい言わないと。

 コンコン、とノックの音がする。
 メイドがドアを少し開けた。

「聖女様、レオナール親衛隊長ですが、いかがいたしましょう?」
「もう着替えも済んでるし、お入りいただきましょう」

 レオ様がドアからひょこっと顔だけ覗かせ、「おはようございます」
 と微笑(わら)った。
 莉里子は密かに思う。彼の笑顔を見る度にときめくのは困ったものだ、と。

「おはようございます。こんな早くから何か?」
「殿下から、リリー様にプレゼントがございます」
「プレゼント?」