「殿下」
 レオ様が、改まったようにランスに呼びかけた。緊張した面持ちである。

「なんだ?」
 ランスが、のんびりと返事した。

「殿下のお髪(おぐし)が少し、その」
「うむ」
「枯れ木に花が咲いた、とでも申しましょうか」

 何を言ってるか意味不明で、ランスは困惑している。
 しかし、さっきから彼を見つめていた莉里子は気づいた。
「ランス! 髪の毛が復活してるわ! 禿山に木を植えたみたいに」
「えっ?」

 先程のメイドが手鏡を持って来て、ランスに渡した。
 「あれっ! 本当だ。増えてる、髪の毛、増えてる!」
 ランスは嬉しそうに叫ぶ。

 「どういうことかしら!」
 「愛よ」
 ダイニングルームの入口で声がする。

 「セレスティア!」
 突如現れたセレスティアは妖艶に微笑んでいる。

 「リリー様の王子に対する愛情が()せる技よ」
 「ええ? どういうことですか?」
 「あなたが王子のことを思う気持ちに応じて、王子が若返っていくのよ」
 「王子のことを思う気持ち?」

 さっき、ランスのことを可哀想に思い、何もしてあげられない自分に腹を立てた。
 その気持ちが “愛” だと言うの?