「我々も、やられっぱなしというわけにはいきませんからね。魔王の領地は土地も豊かで、冬がほとんどない国。魔王は、我々に嫌がらせをしているつもりですが、こっそり仕返しされているのに気づかない愚か者なのです」

 なるほど。それなら勇者を集めて、魔王退治になんぞ行く必要もないわけか。
 「さ、リリー様、お好きなだけ召し上がれ」

 レオ様は微笑んで、莉里子をエスコートしてくれた。豪華な白いテーブルに着席したが、真正面に座る王子と会話できないほどテーブルが大きい。
 王子の顔がピンポン玉サイズに見える。

 「あの、ランスの隣に座ってもいいかしら?」
 レオ様が、慌てて召使いたちに席を変える指示をした。
 席を隣にしてもらい、食事が始まった。

 莉里子に供される食事は、前菜に始まって、スープ、メインディッシュ、と続く。空腹だったので脇目も振らずガツガツ食べていた莉里子だったが、途中で気づいた。
 王子の食事は、ミルク粥のようなドロドロのスープと、柔らかく煮たいちじくだけである。

 「ランス、それだけなの? さっきから私だけご馳走をいただいてるみたいで、申し訳ないのだけど」