信じられないことだが、莉里子は王子を救う聖女に選ばれ、日本からはるばる異世界に来たらしい。
でも、莉里子には何の能力もない。聖女だなんて言われても。
莉里子はそんな風に説明したが、レオ様もランス王子も、彼女の言うことが理解出来ない様子だ。
「私が聖女かどうか、 “良き魔女” さんとやらに、きちんと判定してもらいましょうよ」
「わかりました。今すぐここに、“良き魔女” に来ていただきます。お待ちを」
莉里子の提案にレオ様は頷いて、部屋から出て行った。
残された二人は、気まずさから無言になる。
沈黙を破るように、
「聖女様、突然のことで申し訳ありません。しかし、あなただけが頼りなのです」
王子が必死で言ってきた。
「王子様、聖女は、何をすれば王子様を助けることが出来るのですか?」
「詳しいことは、私は何も知らないのです」
王子の返事に莉里子は驚く。
「聖女様が来てくだされば、何もかも解決する、そうレオナール達から聞かされています」
見た目と裏腹に、とても若く幼い返事をする王子であった。