「レオナール、それはまことか?!」
「はい、王家の猟場に佇んでおられたので間違いないかと」
「ああ、嬉しい! 聖女様、お待ちしていました」
そう言って姿を見せたのは、レオ様よりやや背が高い男性だった。とても痩せていて、ブラウスの胸元から肋骨が浮き出ているのが見えた。他にも、彼の姿には奇妙な点が見られ、莉里子は微かな恐怖を覚える。
ひとつに束ねた髪の毛は、白髪混じりの金髪で、ところどころ毛が薄い。
胸にはシミが多く、手も腕も筋張って枯れ木のよう。
何より奇妙なのは、黒い布で目隠しをしていること。
「リリー様、驚かれたでしょうが、殿下は元は、この世のものとは思えないほど美しい方だったのです」
「酷いな、レオナール。それに過去形で言うなよ、私はまだ若く美しいつもりだが」
悲しそうなレオ様と対照的に、王子は無邪気で明るい。
「では、呪いとは」
莉里子の疑問に、レオ様が重々しく頷いた。
「老化のスピードが異常に早いのです。このままでは、あと何年もしないうちに殿下の命の火は尽きるかもしれない。その呪いを解くことができるのは、聖女様だけなのです」