そばで見守る晴香も気が気ではない。
弱々しかった佳乃子の顔は今や
何故か脳面のような顔になっているのだ。
山城に連絡したいが佳乃子から目が離せない。
晴香はスマホを片手に見守っている。

すると佳乃子の目が厳しくなった。

佳乃子が突拍子もないことを言い出し
晴香は何が起こったのか分からず戸惑った。

「山菜パスタ。
亡くなったお義母さんが作ったレシピで。
それが浩介の好きな食べ物。」


そういうと、佳乃子はスマホに受話器口を手で塞ぎながら
もう片方の手でスマホを指差しながら
「産気付いてる」と言った。

「え??」
情報に処理に頭がフリーズする晴香。


「喋りながら痛みに耐えてる。
洋ちゃんに連絡して。
浩介のスマホはこの人が持ってるから。」

そう言うと佳乃子はスマホに耳を傾けたり時計を見ている。
女の声が先程の佳乃子の発言に「知っている」とキリキリと声をあげている。


晴香は「なんでこんな…」と思いながら慌てて山城に連絡した。

晴香は呼び出し音を聞きながら佳乃子に目を向けた。
さっきまでの今にも倒れそうな佳乃子はそこにはいなかった。
ただ、小さな命の為に運命的を受け入れようと気丈に苦しみに耐えている姿が見えた。

早くこの電話を終わらせて
佳乃子を苦しみから解放させてあげたくて
祈るように山城に電話した。

スマホから聞こえる山城の声に心底安堵し
晴香は涙声でことの顛末を話した。