墓に入ることに関しては「現在時点で」という簡単な口約束にとどめることにしてある。だから今後浩介が他の墓を立てて夏海と将来はそこに入ることもできると伝えた。

「それでも気分が悪い。
墓に浩介くんの名前が入ってるんだよね?
パパの名前がよその女の墓にあるなんて嫌だよね。」そう言って大きなお腹を撫でて不機嫌を露わに山城を見た。


ーー佳乃子の家庭にも成人しているが子どもはいるんだ。その子たちから父親を奪った口が何を言っているんだ。やはり。この女は慰謝料が減額でもこちらの奇妙な提案に乗る気はないのか。

山城は2時間の話し合いで疲れが出ていた。
そこで最終的に夏海を納得させたのは浩介だった。
「この条件を飲もう。このままじゃ離婚がいつになるかわからない。子どもの為に早く離婚しておこう。もう出産まで時間がないんだから。」

「でも」と、浩介の腕にしがみつく夏海を制して
「口約束だから実行しなくてもいいってことだから。それにキミの慰謝料は少ない方が子どもにとってもいい。この問題は早く終わらせてこれからのことを考えよう。」


「じゃぁ。ここで口約束してよ。私とのお墓に入ってよ。奥さんとじゃなくて」
「そうだね」
浩介が疲れ切った笑顔を夏海に見せるとそこで何とか夏海は渋々納得したのだった。