山城はホテルのロビーで浩介と話している。
淡々と条件を飲んでいく浩介に拍子抜けだ。

浮気男はこれからの幸せライフで頭がお花畑というわけではなさそうだ。

どちらかというと修行僧のような硬い表情に見える。
甘い生活を送っているようには思えなかった。


浩介は代理人をつけないそうだ。
そのことに関して夏海は「財産を守るために代理人をたてるべき」としつこく噛み付いていたが、浩介は憮然と代理を立てないと言い放った。

ーー佳乃子が生活を困らないように財産を分けようとしてるのか。

それに比べてさっきの話し合いは妊婦相手の話し合いだったからもあるが色んな意味で気を使い策を使いそれこそ気のすり減る仕事だった。

特に「浩介が一緒の墓に入る」という条件はオブラートにオブラートを重ねて伝えたが難色を示した。
「佳乃子の墓石等の費用と同等のものを慰謝料として請求することとする」として、場合によっては慰謝料が標準的な相場より安く済む場合があり、また標準的な慰謝料から増えないことも条件に入っていると伝えてた。

慰謝料が安く済むかもしれないということは、夏海にとって得なことだったが
「なぜこれから夫婦になる人間が元の夫婦と同じ墓に入らなければいけないのよ?
ほんとただの嫌がらせじゃない!」
と怒りをあらわにしていた。