結婚したと親戚づてに聞いた時は、佳乃子も落ち着いたと思っていたが
奇想天外は大人になっても変わらなかったようだ。
先日亡くなった佳乃子の父も、佳乃子のこういう性格を心配していて、よく山城相手に話していた。

また再び、佳乃子の尻拭いをするとは思わなかったが。


「でもー、相手がその条件を飲みます?」
思い出したかのように晴香が書類を捌きながら山城に話しかける。


「そこは腕の見せ所…だな」
山城は、小さい頃からよく見た佳乃子の申し訳なさそうな顔を思い出していた。

ーーさて、どうしたもんだか。
浩介の感触はそう悪そうではなかったようだから
問題は相手の女『松永夏海』がこの条件を飲むかどうか…だ。
あちらは、子どもがお腹にいるようだから
早く離婚して欲しいんだろうが…
はいそうですねと墓の条件をのんではくれないだろうが…。
これが役に立ちそうかな。

机の上にあるSDカードをトントンと指で叩いた。

あの女が佳乃子の父親の葬式の日に浩介を迎えに来たのを見た山城は赤いミニバンを尾行した。
浩介の単身赴任先までの長い道のりだった。
女は浩介を家まで送った後、ある場所に寄っていた。

ーーしかし浩介くんは、えらい女に捕まったな

山城はSD カードを眺めながら、戦略を考えている。