「あの条件って大丈夫?」
さっきまで佳乃子が使っていたグラスを下げながらひっつめ髪の晴香は心配そうにが給湯室から山城に話しかけた。

「そうだな。まぁ奇想天外だわな」

山城は眉間に皺を寄せてまたため息を吐くのように答えた。今日は何度ため息をついたかしれない。

「別れた旦那と一緒のお墓に入りたいとか。
しかも浮気した旦那とか。子どもできたとか。私は無理」
晴香は黒縁メガネの奥に眉間の皺を作っている。

「そういうことやっちゃう、タイプなの」

「お父さんの従兄弟だもんね?
奇想天外。血は争えない。」
うんうんと頷きながら晴香は自分の机に座って事務仕事を始めた。

ーー小さい頃から突拍子のないことをするからな
山城はため息をまた吐いた。

佳乃子は小さい頃からおとなしい性格だったが、純粋が故に突拍子もないことをやり出すことがあった。
それは時に謝罪行脚になることも。

山城が中学生の頃、佳乃子は小学一年生。
両親が共働きで一人っ子の佳乃子の面倒を家が近所の山城が見ることが多かった。
やんちゃな中学生が小学生1年生の面倒など見たがるわけがなく、嫌々かのこの面倒を見てはからかって遊んでいた。

その当時佳乃子が通っていた小学校で、飼っていた鶏が野犬に襲われることがよくあった。
だが山城は「校長が休みの日に鶏をたべている」と冗談で佳乃子に話した。
それを間に受けた佳乃子は金曜日に鶏をダンボールに入れて持ち帰り家中に鶏が飛び交うという大惨事があった。鶏の白い羽が居間中に舞う瞬間を今も鮮明に覚えている。

その後佳乃子と山城が各所に謝罪してまわったのだ。

小学校2年生の頃、怪談話で佳乃子を怖がらせていた後に庭で花火していた。
帰宅した祖父をおばけと勘違いした佳乃子が花火を持ったまま逃げ回り、束のロケット花火に引火して四方八方の家を追撃し大変だった。親戚の鬼のような監視のもとこれもまた山城と佳乃子が謝罪と後片付けをした。

佳乃子が小学校3年生になる頃には、山城も高校受験の勉強を理由に面倒を見ることもなくなる。
だが、鍵っ子の佳乃子は毎日山城家に出入りするので山城にとって妹のような存在だった。