楓は通夜も告別式でも父と話しが出来ずにいた。
焦っていた楓は火葬場の控室から寿司も食べずに父を探しに飛び出した。
火葬場の玄関のところで親戚の山城さんに会った。
子供の頃は疎遠だったが成人してから何度か山城と酒を交わす機会があり、あえば近況を話す仲だ。

「おー楓。」
太い中年の手を振る山城に楓が駆け寄る。
「山城さん」
「梓が怒ってたぞ。こんな顔で」
と、しかめっ面をしてみせた。
「いいんですよ。後で梓とは話します。帰るんですか?」
「悪りぃな。寿司だけ食って帰るわ。お母さんが凹んでるからお前らがよく見てやれよ。」
「はい。わかってます。
今日はありがとうございます。駐車場まで送りますよ。」
楓は山城の横を歩き始めた。
一本道の歩道を少し歩くと右側に細長い駐車場がある。


山城が自分の車に乗り、楓が運転席側から見送ろうと運転席の側によった。
「じゃぁ、山城さん気をつけて」
楓が手を振ろうとした時、赤いミニバンの車入ってきた。
火葬場は祖父の予約しかないので自ずと知り合いかと思い、楓は運転席と助手席を見た。

運転席の女は楓より少し年齢が上ぐらいの小綺麗な女それとと助手席には知った顔の浩介が乗っていた。

楓は赤いミニバンを食い入るように見た。
ミニバンは駐車場で迂回して元来た道を戻っていった。
隣の女が浩介ににこやかに話しかけているのが遠目に見えた。

「なにやってんだよーー!!」
楓は体から湧き上がる失望と苛立ちを生まれてはじめて怒りで体が震えた。