「おじいちゃん、ちゃんと見送れたね。」
寿司が並べられた和室に梓と楓は座っている。

親戚は佳乃子が一人っ子ということもあり少ない。
火葬場まで見送りに来てくれたのは佳乃子の従兄弟の山城大地、後はお爺ちゃんの友達が6人参加してくれた。

楓はずっと不機嫌な顔でいる。
それはそうだ。
父は通夜や告別式の準備ををしているが、母の心に寄り添っている様子がない。母は悲しむ暇もなくバタバタしている母を気にかけもしない。
告別式なんか母の横にも座らず三つ離れた席にいた。

「ねぇ、おじいちゃんそんな顔で見送って欲しくないと思うよ」

「悪かったな」

「何それー」
と、梓が怒っている。
梓にイライラしたって仕方ない。楓は部屋を出ていった。

「梓ちゃん、楓くんも悲しいんよ。今はね。大目に見てやって」
山城が寿司を食べながら梓に話しかけた。
山城は55歳だがゴルフ焼けで実年齢に比べ若く見える。
「まぁ、梓ちゃんだってね悲しいもんな」
親戚といえど、祖母の葬式や法事で挨拶するぐらいの付き合いのおじさんなので梓はそれ以上は文句を言わなかった。

「じいさんはすごく佳乃子ちゃんのことは心配してたからな。」
「一人っ子だからっていうわけじゃないけどさ。佳乃子ちゃんが結婚してからも心配してたよ」
山城はモグモグと寿司を食べながら祖父の話を梓に聞かせた。
「そんなに心配症だったの。おじいちゃん。知らなかった。」
梓もいつの間にか山城と祖父の話を楽しんでいた。

「そらなぁ。何もなきゃいいけど。まぁ、なんかあったら助けれることもあると思うから。これ、私の連絡先。持っておいて」
そういうと、仕事があるからと梓に名刺を渡して山城は帰っていった。