いつもの朝。16歳の僕は学校指定のリュックにお弁当を詰め込み、家をでる。
「行ってきます」
 帰ってくる声はない。この家には僕しか住んでいないからだ。

 いつも通りの教室。少し違うとすれば、今日来月に行く遠足の行き先が発表されるから、みんなワクワクしていることくらいだ。
「えー、今日はだな、みんなが楽しみにしているであろう遠足の行き先について発表する」
 担任の先生がそういうとクラスメイトたちは、「遊園地かな」「俺ユニバがいい」「めんどくさいから公園でよくね?」と口々に話している。
「来月に行く遠足の行き先は〇〇遊園地だ」
 そう言った瞬間、クラス中には「えぇ」「あのぼろっちいところー?」「いややー」「俺当日休もっかなー」と、マイナスな言葉が飛び交う。その中で1人だけ楽しみにしている僕がいる。実はこの遊園地は6歳の頃の僕の誕生日の時に両親と行く予定だったのだ。誕生日プレゼントでもらったあの青いリュックを持って。だか、この遊園地に向かっている途中事故で両親はこの世から去った。

 遠足前日の夜。僕は、あの事故から使えずにいたあのリュックを押し入れから取り出して、遠足の準備をした。一度も使ったことがないからまだ綺麗なままだ。
 明日、僕は10年越しに両親と遊びに行く。大切なこの青いリュックを持って。