ホストH ②

陽光が落ちていく

「ざけんな!飛んだだと
絶対探し出せ!
150万だぞ
ロック、お前行ってこい!」
「えっ、お、俺ですか?」
「当たり前だろ!
売上もねえんだから、
客なんか一人もついてねぇだろ」
黙るパシリのロック
「顔、わかんだろ。
とりあえず引っ張ってこい。
俺が話すからよ。
どうせ栄近辺、彷徨いてるはずだからよ。」
「は、はい。
分かりました」
ロックは、無愛のクウマに逆らうことはできず、苦い顔で扉を開き錦の夕暮れに消えて行った。

「おいおい、クウハ
どうすんだよ」
短髪のユウマは、スクワットしながら聞いた
「あー、あのアマ、クソ
回収できなかったら、宅かフロ浸からせるしかねぇだろ」
ユウマのスクワットの速度が上がった
「当然だろ」

・・・・

クウハは店内のある絵を遠目に見つめた
「ベロニカなんかクソ喰らえだ」
「なんか言ったか?ヴェロニカ?」
無愛と短髪が言葉を交わす。
無愛が
「女の操の象徴だ
キリストの汗を拭いて慰めた女
ゴルゴダの丘に向かう時の話だよ」
「あん、なんだそれ
チョコレートみてぇだな」
短髪は、スクワットを終え
壁相手に腕立てを始めた
「で、なんだヴェロニカ?
ミサオがなんだって」
「もういいよ、筋トレに集中しろ」
「教えてくれ、よ、頼むよ、クウちゃん」

ユウマとクウハは店の上位で切磋琢磨
よきライバル関係、仲間だ

「ちっ、
女の貞操を準える女だ
あー、旦那がいるのに他の男には抱かれてはいけねぇとか、
好きな男以外には抱かれてはいけねぇ、
遊びでSEXしちゃいけねぇとか」
「ふーん、俺たちが立ち入っちゃいけねぇ領域だな」
「ああ」
「なんで、クウちゃん、そんなの」
「いいだろ、別に」
「気味わりい」
「うるせーな、ただ」
「ただ?」
「キリストはどんな気持ちだった?」
「へっ?何言っちゃってんの?
クウちゃん、どうしちゃったの」
「ゴルゴダの丘に向かう足はしっかり大地を踏みしめていたのか、汗を拭いたベロニカにしっかり礼は言えたか、声は震えていなかったか」
「クウハ・・・

あっそうそう、クウちゃん」
「なんだよ、ちゃんと聞いてたか?」
「こないだ行った病院でさ、花粉症の薬もらおうと思ってさ。したらさ、俺、走って行ったわけ、トレーニングね」
「病院行くのに、走るな」
「したらさ、看護婦ちゃん、若い子、俺の汗拭いてくれたわけ、なんだっけサロコとかって名札に書いてあったな」
「・・・そんな看護師いるのか」
「うん、俺も驚いちゃってさ・・・
ちょっと好きになっちゃった、よ」
「・・・」
「あの子、ヴェロニカだったのかな・・」

ユウマとクウハは1時間ほど雑談していたか。
入り口のドアが開いた。

「ロックか?」
短髪が反応した

無愛の
背筋が飛び跳ねた

「おはようございます!」
「おはようございます!」
短髪と無愛は共鳴した

オーナーのマサナだった
いつも通りの微笑を浮かべていた

#赤喉のスミカ
#短髪のユウマ
#無愛のクウハ
#サングラスのニャン
#パシリのロック
#マサナ
#ホストH