俺が描いた絵を、東雲はまるで宝物を見つけたような目で見ている。キャンパスの上に描かれているのは三年前に家族旅行で行った鎌倉の町だ。穏やかな時間が流れるいい町だった。

「鎌倉だ。行ったことはあるか?」

「ないです。でも、鳩サブレとか大仏有名ですよね」

そう言いながら絵を見ている東雲だったが、持っている袋からポタポタと水滴が落ちている。俺が慌てて「水!袋!」と言うと慌てて袋を見た。

「あわわ!アイス買ったの忘れてました〜」

「お前、この部屋に冷蔵庫はないんだぞ」

「なので今ここで食べようと思います!」

東雲は袋からアイスを取り出した。バニラアイスとチョコレートアイスだ。こいつ、二つアイス食うのか?そう思っていたら東雲がアイスを俺に差し出してくる。

「どっちが食べたいですか?」

「いいのかよ?」

「もちろんです!」

天真爛漫という言葉が似合う笑顔で東雲は言った。可愛いと思ってしまった自分がいて戸惑う。少し迷ったけどチョコレートアイスを選んだ。