明るくて先輩にどんな辛口コメントを言われようと頑張るあいつは、美術コースの人気者に見える。同じ一年に友達もできたみたいで、毎日楽しそうだしな。

「……って絵を描かないとダメだろ」

今日ここに来たのは、この水彩画を完成させるためだ。あいつのことを考えてたらダメだ。頭を切り替えて絵と向き合う。絵を上手く描けるようになるには、ただひたすら筆を取るしかない。過去の辛口コメントを受けた時の悔しさと未来への期待をこの色に混ぜて、ただ描く。

「小鳥遊先輩、おはようございます!」

背後から聞こえた高い声に俺は驚いて飛び上がる。振り返ると東雲が立っていた。その手にはコンビニの袋がある。

「お前、驚かすなよ!」

俺が胸の高鳴りを誤魔化すように大きな声で言うと、東雲は「すみません。ノックはしたんですけど」と申し訳なさそうに言う。こんな態度を取ってしまったことを申し訳なく思うが、口からは何も出てこない。

「先輩の絵、やっぱり綺麗ですね。ここはどこの町の風景ですか?」