「かのーちゃん」

再び私の隣に並んで歩き始めた長屋くんが私の名前を呼ぶ。

恥ずかしさなのか、悔しさなのか。

分からない感情で、返事ができない。



「…」

「おーい」

「…」

「練乳氷、溶けてんぞ」

思わず立ち止まった私を見て、長屋くんはしたり顔で笑った。



「……面白がってる」

「ゴメン。ちょっとガキだった」

「…ほんとだよ」

「ん。でも、俺もいまドキドキしてるからお互い様ってことで」


なにそれ。

なんで長屋くんがドキドキするの。

おかしいじゃん。

好きな子、いるんでしょ。



心の中ではわかってる。

これ以上近付いたら、だめだって。





それでも私を見つめる瞳から目を逸らせないのは、夏の開放感のせいだ。






ゆっくりと、2人の影が重なる。そんな夏の夜。









end