「瑠夏く、」 「花火大会。」 私の声に被せるように彼の声が響き渡る。 「花火大会。来週あるんだけど、行かない?」 急な提案に息を飲む。 花火大会、か。 学生時代のあの瞬間が蘇る。 彼の隣で初めて見た、最初で最後の花火。あれから1度も花火は見ていない。毎年花火の時期が近付くに連れて気が重くなっていた。 そんな花火大会にまた彼と? 口の中に苦味が広がっていく。 黙り込む私に彼が言葉を紡ぐ。