花火は色々な種類が入っていて、中でもバチバチと激しくはじけるのをやったときは盛り上がった。

 はしゃいでいるとあっという間に花火はなくなって、残すは線香花火のみ。


「やっぱこれだよね、最後は」


 青磁くんが線香花火の封を開ける。

 ……これで、終わりなんだ。


「……最後の線香花火が落ちるまでにしよう、青磁くん」

「……うん。そうしよっか」


 私がなんのことか言わなくたって、青磁くんはわかってくれた。

 きっと青磁くんだって頭によぎっていたはずだ。

 私たちの関係の終わりのことを。


「……約束、だから……」

「……うん。そうだね」


 自分で言っておいて、泣きそうだ。

 けれど、終わらせるなら今がいい。

 いちばんきれいだと思うから。

 思い出として仕舞っておくなら、きっときれいな方がいい。


 最後の一本は、私が持った。

 ジジ、と微かな音と共に、小さな光の玉が震え出す。

 いつの間にか辺りに下りていた薄闇(うすやみ)に、光の線がたくさんの花を咲かせた。

 満開のあとで、花火はだんだんと静かになってゆく。

 ぷっくりとした火の玉は今にも落ちてしまいそうに震えて、けれどいつまでも名残惜しそうにその場にとどまっている。


「青磁くん、っ」


 私は思わずこぼした涙と共に、気づけば好きな人の名前を呼んでいた。

 ──そしてそれらと一緒に落ちた、最後の線香花火。