私たちの関係は期限付き、と決めて。

 最初で最後のデートをしよう、と決めて。

 せっかくの夏だから、海を見たいし花火がしたい。

 ぜんぶ、ふたりで一緒に話したことだ。


「まだ明るいね」


 午後六時過ぎ、辺りに闇はまだ落ちていない。


「俺の都合で、ごめんね」

「ううん。謝らないで、青磁くん」


 青磁くんはまたごめんと言いかけて、口をつぐんだ。

 俺の都合だとは言ったけれど、きっと親に門限でも決められているのだろう。


 袋から出した手持ち花火は、見かけより少なかった。

 100円ショップのおもちゃみたいなライターで恐る恐るろうそくに火をつけようとしたが、海風のせいもあってうまく点かない。

 青磁くんはそんな私を見かねてか「貸して」とライターを手に取り、スムーズに着火させた。

 些細(ささい)なことでも、そうやっていつもかっこいい。


「ああいうときは手で覆うといいよ」


 青磁くんはそう言って、一本目の花火に点火する。

 色とりどりの小さな火花はサァサァと音をたてて、夕焼け色に染まりつつある砂浜へと落ちてゆく。


「明るくてもきれいだね」

「うん」