青磁くんはちょっとだけ、ばつの悪そうな顔をする。


「……俺の家、ちょっと訳ありっていうか。親が厳しくてさ。だから、砂羽、俺の分もらってくれない? 風鈴」

「えっ……う、うん、私はいいけど……いいの?」

「うちにこっそり仕舞っておくより、砂羽が一緒に飾ってくれた方がいいよ」

「そっか……じゃあせめて、写真を送──」


 言いかけて、思い出したのは、青磁くんはスマホを持っていないということ。

 そのことが、親が厳しいという発言と紐づいた。


「気持ちだけもらっとく。ありがと」


 青磁くんがどこか遠い人だと感じるのは、彼が素晴らしい人だからというだけじゃないのかもしれない。

 もしかしたら青磁くんは自分から、他人との間に一定の距離を保っているのかもしれない。

 そんなの私の勘違いかもしれないけど、もしそうじゃないのなら、それは少しだけ、寂しいことのような気がした。

 そう思うことすら、私の勝手だけれど。

 青磁くんは、普段なにを考えてるんだろう。

 憧れだとか、好きだとか、そんなふうに思っていたはずなのに、私は青磁くんのことを何にも知らないのかもしれない。


「砂羽、そろそろ行こっか」

「あ……うん、そうだね」


 いつの間にか、時間は迫ってきていた。

 そして、私と青磁くんは約束していた場所に向かう。

 私たちは今日、浜辺で花火をするためにここに来たんだ。