みんなの視線を集める中、まさか自分の言ったことを取り消すわけにもいかずに、私はただ慌てふためくことしかできなかった。
そうして、私と青磁くんのお付き合いは、ほぼ事故のように始まったのだった。
うれしくないわけじゃない。
青磁くんのことが好きじゃない、わけじゃない。
本当はうれしくてうれしくて、青磁くんのことだって、自分で認めたくないだけで本当は好きなんだ。
……でも。
「……青磁くん、やっぱり、いなくなっちゃうんだよね」
「……うん、そうだよ」
表情を変えずに微笑んだままの青磁くんが、どんなことを考えているかわからない。
私は自分から話を振っておいて、わかっていたはずの寂しさに襲われた。
──青磁くんは、夏休みが終わる頃、遠くへ引っ越してしまうと決まっていた。
だから、私たちのお付き合いは期限付き。
今日この日が、最初で最後のデートだと、ふたりで決めた。
「……ごめんね」
「あ、謝らないで! 青磁くんが悪いことなんてないよ」
謝りたいのは私の方だ。
はじめから私は気づいている。
青磁くんが私のことを好きだなんて、そんなの嘘だって。