𖡼


 二週間後、私は自分の部屋で、窓から外を眺めていた。

 今夜は近所の神社で花火大会が行われる。

 それを自分の部屋のベッドの上という特等席から見るのが、私の夏一番の楽しみだ。

 けれど今年は、窓からの景色が少し違う。

 色も形もバラバラなふたつの風鈴が、時折、風に揺れる。

 私が作ったのは、水色で少し不格好なほう。

 もうひとつの深い青でまんまるのほうを作った人は、もう、遠くに行ってしまった。

 私にも、友だちにも、誰にも何一つ教えてくれないまま。


 ──私たちの約束は、やっぱりあのとき守られたんだ。

 私の言葉と青磁くんのキスによって、ほんの少し延長しただけ。

 だって、帰り道で手を繋いでくれなかったのも、なんにも教えてくれなかったのも、きっとそういうことだったからでしょ?


 ふいに、私の沈んだ気持ちを吹き飛ばすかのように、夜空に大輪の花が咲く。

 それから少し遅れて、私の悩みなんて打ち砕かれてしまいそうなほどの轟音が響いた。

 弾ける火花は、真っ暗な夜に何にも邪魔されることなく咲きこぼれて、やがて闇に消えてゆく。

 あんなにきれいな花火だけど、あんなに大きな音だけど、空はどこまでも繋がっているけれど──きっと青磁くんは今、私と同じものは見ていない。