バイクで走って15分。
着いたのは、昨日も来た真澄の家。
柵の外にはただ立っている真澄がいた。


「よ」
「あっつぅ…。お待たせ」
「別にそっち行ってもよかったんだけど」
「いーの」


バイクを止め、蒸されてたヘルメットを外して答える。
対面し、ぱちりと目が合う。
口火を切ったのは、私だった。


「すき」


2人の間にその2文字が零れ落ちた。
真澄が目を見開く。


「好き、好きだよ、……すきなの」
「え、おい夏月」
「…………好き」
「あー、うん、わかったって」


頭をかきながら目を泳がせた真澄は、ちょっと下にある私の頭を胸に引き寄せた。
あ、やばい。なんか泣けてきちゃった。


「…ごめん、ずるいことして」
「ほんと最悪。こんな、こんなに好きにさせといて勝手にいなくなるとか、まじで」
「ん、ごめん」


頭の上にぽすぽすと真澄の手の感触がある。
その手は安心するのに涙が止まらなくて、真澄のTシャツにシミを作っていった。

ぐい、っと目をこすって無理やり涙を止め、彼の胸を押し出して離れる。
後悔させてやる、そう決めたから。

ふ、と、今までの中でいっちばんの笑顔を向けてやった。


「せいぜいあっちで、寂しくなって1人で泣いてることね」


さようなら、私の夏。
そして、私の短い恋。