アイテルの琥珀の瞳とは違って、クロイの瞳は誘惑するかのように、人を惹き付ける。


魅了する能力がある。


端整な顔立ちと合わさって、クロイは私にとって世界一美しい人間だと思う。



「クロイ、さん……」



やっと出た声は、クロイが気付くか気付かないかの瀬戸際のか細さであった。


でも、クロイは私の声に気付いてくれたのか、瞳が一瞬大きく揺れていた。



「俺の挨拶に返事をしないなんて、愚か者かと思ったよ」



いつもの調子のクロイだが、彼の顔色は心配で染まっているかのようであった。


私は頷くことでしか、彼に応えられなかった。



「アリアはどこにいるの?」


「……いえで、待って…ます」


「ユマさんはこれからどうするつもりなの?」



どうするのか、それは私にも分からない。


「帰ります」とだけ言えばいいのだ、それでクロイは、私を心配することから解放される。


けれど私の脳と口は言うことを聞いてくれないようで、私は呆れてしまう。


こんなにも弱い自分に、失望してしまう。