「嫌ですよ~。
だって僕、センパイのこと大好きですもん」



そう言いつついつまで経っても、“彼”は私を慕うふりをして、動向を伺っているのだ。


私は“彼”の、そんなところが嫌いだった。


しかし、私は“彼”が目の前に現れたとしても、不思議と心が揺れ動きはしなかったのだ。




──【エリス】は、私が天国にいた頃、世話を焼いていた天使だ。


私よりも後に亡くなり、羽根を宿した天使はとても愛くるしかったが、同時に彼は卑怯な程の二面性を宿していたのだ。


だから私は、エリスがとても苦手であった。


けれど、エリスはどうも私に構おうとあの手この手を使ったため、私は根負けして付き合うことがしばしばあったのだ。





エリスが私の前に現れたのは、つい最近の出来事であった。


男の子であるのに高い甘えた声は、嫌でもエリスであることに気づいてしまい、私は少し失望したのだ。


羽根を引きちぎって人間になったのに、天使の姿が見えるなどあってはいけないことだと、私は分かっていた。


でも私は彼が現れたのと同時に、自分のこれからの運命を悟ってしまったのだ。